最後に、あえて役に立たない小型特殊自動車免許を取得する意義を考えてみましょう。
1.安価で手に入る身分証明書
あえて言えばこれが唯一の実用的な理由になるのでしょうか。日本においては自動車の運転免許証が身分証明書(本人確認書類)として最強のものです。近年は金融機関や郵便局では、成りすましや、虚偽名義口座作成などと言った不正行為の防止のため従来以上に本人確認をするようになりました。市区町村の役所役場で戸籍や住民基本台帳に関する届出・申請をする場合も本人確認が厳しくなりました(というよりも従来のチェックが甘過ぎたというべきですが)。
そう言う場面で一番使えるのが何といっても運転免許証です。普通自動車免許所持者がペーパードライバーになってしまって免許を本来の目的ではない身分証明としてしか使っていない人も結構いますね。もちろん普通自動車免許の場合は始めからそのつもりで取得する人はほとんどいなくて、結果としてそうなってしまったのでしょう。
はじめから身分証明書にしか使わないと割り切るなら、実技試験も取得時講習もない小型特殊自動車免許(小特)が一番安上がりで手に入るので良いでしょう。そういう場合にまず思いつくのは原動機付自転車免許(原付)がまず思いつきますが、原付の場合は取得前に「原付講習」を受けなければならない分、費用も労力も余分にかかります。
埼玉県の場合は、小特免許は申請手数料1,650円+交付手数料1,650円です。原付ではこれに加えて原付講習手数料4,050円が必要です(註6)。
(埼玉県では、平成19年1月4日よりICチップ内蔵の免許証になるため交付手数料が450円値上げされます。 平成18年12月26日加筆)
(註6) 直接、公安委員会(免許センター)に払う費用です。実際には提出する本籍記載の住民票(小特取得の場合は既に原付免許があれば不要)、証明用写真の用意が必要です。また試験の勉強するために問題集や参考書が必要になりますので、これらの費用もかかります。また免許交付前に交通安全協会の入会案内があって、3年分の会費900円程を更に支払う人が多いのですが、あくまで任意で支払う義務はありません。
試験に落ちれば当然のことですが、余計に費用がかかります。費用はもちろん、一連の試験と手続で半日つぶれてしまうので余計に手間もかかる方が痛いかも知れません。試験は1日1度しか受けられませんので翌日以降にまた来なくてはなりませんので、侮らずにしっかり勉強しましょう。小特の場合は試験の情報が乏しいという難点がありますが、「その2」を参考にして下さい。
2.密かな優越感を得る
特に高校生向け。16歳から取得できる運転免許は、原付、小特、普通自動二輪の3種類です。この中でオートバイの免許である普通自動二輪は実技試験があるので費用も手間も別格にかかりますので、高校生にとって初めて取る免許が原付であることが多いでしょう(註7)。原付を取った後、なるべく近いうちに、もう一度小型特殊自動車にチャレンジしてはどうでしょうか。
(註7) 昔ほどではないでしょうが、校則で免許の取得が禁止されている高校もあります。
はじめに取得した免許証には表面の帯の色が若葉色ですが、後に他の免許区分を併記するか、更新した場合に、帯の色が青色になります。次の更新まで3年は若葉色の免許証なのがいやな場合は、別な区分の免許を取得すればよいのです。原付を取ったあとに小特をとれば、初免許の翌日からでも青帯になります(取得の順番は逆でも可)。ただし、免許が青帯になったと言っても原付免許の初心運転者期間(註8)が終わった訳ではないので注意してください。
(註8) 普通免許、大型二輪免許、普通二輪免許又は原付免許を受けた者で、当該免許を受けた日から当該免許を受けていた期間が通算して1年に達することとなる日までの間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く)。「その2 註4」参照
実のところ、ただパッと見で初心者っぽく見えないだけの話です。しかし高校生位の年齢の人だとちょっぴり自慢出来そうじゃないですか。それに余計に試験を受けていれば道路交通の規則もより身につき安全意識の向上につながるかも知れません。
3.完全フルビッターを目指す
昔の免許証の免許区分の有無表記が、「1」と「0」で表されていたことから、全区分の取得者は全部が「1」となり免許マニアの間ではフルビットと言い、またフルビットの達成者はフルビッターというのです(当方は1度だけ全種運転できる人に免許証を見せてもらったことがありますが、その人は自衛官でした)。
現在は表記法が後に変わって、このページトップの画像の様な漢字になりましたが、かつての名残で今でもフルビットと言います。小型特殊を取れば「小特」と表記されるのですが、上位免許(例えば「普通」「大自二」)を先に取ってしまうと、下位の区分が運転できても表記されることがないのです。
初めて取る免許が普通免許と言う人が最も多いと思われますが、その場合は「原付」「小特」の表記がなされないのです。免許の取り消しにでもならない限り、「小特」の文字を入れるチャンスはありません。
と言うわけで、はじめに原付と小型特殊を取らない限り、12の区分を全部埋めて完全フルビッターになることが出来ないのです(註9)。あくまでマニア的な趣味で実用的な意味は全くありません。
(註9) 現在、完全フルビッターの免許も近く(平成19年6月2日改正法施行)中型自転車免許の創設で空欄ができることになります。参照平成19年6月中型自動車免許が新設平成19年5月25日加筆。
(おわり)
近藤巧器行政書士事務所 埼玉県朝霞市
平成18年5月29日公開
平成18年12月26日加筆 平成19年5月25日加筆
注意 この文章には私的見解を含み、行政機関のそれとは異なる場合があります。また個別のケースによって事情が異なります。この文章を参考にした行動の結果は保証出来ませんので、自己責任でお願いいたします。
小型特殊自動車免許を取ろう その1
小型特殊自動車免許を取ろう その2
小型特殊自動車免許を取ろう その3
小特免許取得後は上位免許を目指そう
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上位免許を取ると小型特殊自動車の運転は可能だが、免許証に「小特」の文字は入らない。