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株式会社の決算公告は必要ですか?

 株式会社は毎年度ごとに決算公告をする必要があります(註1)

 平成18年5月1日をもって会社法が施行され、資本金の準備が1円以上で済むなど、株式会社の設立が容易になりました。その一方で、有限会社制度が廃止され、会社法施行以後の有限会社の新規設立は出来なくなりました。

 駆け込みで有限会社を設立された方の中には、決算公告をする義務を免れたいと言うのが理由の一つにあったと思います。

 新しい会社法施行以前の旧商法においても、株式会社は決算公告をする義務があったのでした(註2)。しかし現実問題として、特に中小企業などでは決算公告をやっていないことが多かったのです。

 会社を経営している方々にとってはなるべく自分の会社の財務状況を知られたくないし、公告のための費用をかけたくない言うのが本音です。

「今まで通り決算公告なんて面倒なことをやらないで済むならそれにこしたことはないのですけど、やっぱりやる必要があるんでしょうか?」

 そんな風に尋ねられたら、もちろん、
「決算公告は必要となっています……」と答えさせて頂きます。

 決算公告を怠ったり、あるいは不正の決算公告をすれば、100万円以下の過料に処するということになっています(註3)。しかし法令に違反しているからと言って、あらゆる違反状態が処罰の対象になる訳では、事実上ありません。もちろん、そうだからと言って法令遵守をしなくて良い理由にはなりません。

 と言っても、実際のところ、旧法時の様な、限りなく有名無実な規定のままであるのか、実質的に決算公告をする様に取り締まりる方向になるのか知っておきたいと言うのが人情と言うものです。

 正直なところ現状ではなんとも言えないのですが、新しい会社法の施行を機に、法令通り決算公告をさせる様な行政当局の方針転換があるのではないかと言う説はもっともらしく感じられます(註4)(註5)(註6)

(おわり)
近藤巧器行政書士事務所 埼玉県朝霞市
平成1814日公開

註1 会社法440条 参照
註2 旧商法283条4項
註3 会社法976条2号
註4 この辺は、平成18年6月1日の道路交通法一部改正で、民間委託監視員の導入したのを機に、駐車違反の取締りが厳しくなったを連想してしまいます。
註5 参考文献 牧口晴一・齋藤孝一(2006)『イラストでわかる中小企業経営者のための新会社法』経済法令研究会
註6 この文章を書いて、1年以上経ちましたが、株式会社でも決算公告をしない会社は結構あるのが実際です。新会社法が施行以降、取り締まりが強化されたかと言えば、今のところそうではは無い様です。と言っても、法令上はあくまで決算公告が必要であることには変わりありません。(平成19年11月27日加筆)


注意 この文章には私的見解を含み、行政機関のそれとは異なる場合があります。また個別のケースによって事情が異なります。この文章を参考にした行動の結果は保証出来ませんので、自己責任でお願いいたします

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 中小企業経営者向けの良い会社法の本はあるようでいて、結構少ないです。イラストでわかるとありますが、イラストばかりではなく、しっかりした文章で説明されています。モデル定款も掲載しています。